馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

仮題、空飛ぶクジラ 25


「そんで、初めて無人で太平洋を横断するのが、こうたろう」
「いい名前。流行るかも」
「でもなぁ、地味やねん。アルミ合金が剥き出しの灰色で」
「かわいいデザインのがあるよね、イルカっぽいのとか」
「こうたろうは、もともとは自衛隊の、無人飛行の実験機やからな」
「ふ~ん」
「コンテナを海の上に投下する仕掛けとかついてるし。いらんやろ~」
「吊り上げて救助するのとか」
「あるある、ついてる。でも、花さん。ヘリみたいに空中で止まれへんから」
「あ、そうか~」
「いまは民間機になってるけど、海上自衛隊に戻るか、海上保安庁に行くかやろね」
「いいな、侑さんの仕事」
「なんで?」
「夢があるもん」
「点検して、整備して、部品揃えての繰り返しやで」
「子どもたちのメッセージを届けるって、いいよ~」
「その企画で無茶振(むちゃぶ)りされてるけど」
「どんな?」
「メッセージカードを入れる箱は、小学生くらいの子どもでも開けれるようにするねんて」
「うん」
「手でちょっと力を加えたら、ぱたぱたって箱がばらけるのがええんやて」
「いいね、その演出」
「首相補佐官からのリクエストが会社に来たらしいわ。メディアには内緒やて。総理大臣て、暇なんか?」
「私も、見たい、それ」
「思いつきで言(ゆ)うのは勝手やけど、やるほうの身になってみ~」
「往生しまっせ~」
「ほんまに往生するわ。そんな箱、どこに売ってんねん」
「侑さん、がんばって」
「下っ端やから、そんな仕事ばっかり回ってくるわ」
「がんばれっ」
「ほんま、どこに発注してええんか分からへん。積むときにばらけたらどうすんねん」
「早い早い、今じゃない」
「その箱の、ここだけは押したらあかん、って言われたら、気になって押してまうよなぁ」
「寸止め、とか。触るだけ、とか?」
「お~っ、セーフ。どきどきする~、とか?」
「あ、いらっしゃいませ」
 花は、客を迎えた。
「また来ますっ、ありがとう」
「はい、ありがとうございました」
 侑は、半笑いが止められない。
 毎晩、笑いながら自転車をこぐ人がいても、見なかったことにしてほしい。
 人には、それぞれに、事情がある。



  1. 2015年09月20日 20:32 |
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

コメント

>パタパタって箱がバラける

これは日本の折り紙の技術が役に立ちそうですな~♪ アメリカには優秀なオリガミ作家がいる…
…そこへ発注し、もし彼らが受注したなら
日本のメッセージを受け入れるために通じていた者たちがアメリカに、アメリカ人として其処に居たことになる。
戦争する度に大統領の支持率が上がる狂った国の中に。その人達は居る。

なんと心が震えることか。
彼らは待っているだろう。
日本の子供たちが描いた平和が届くことを。
夢? 実現不可能の理想?
そんなの知るか!

平和のメッセージは届く。
受け入れる人たちは

そこにいる。

たとえ、戦争を続けていたとしても。

  1. 2015/09/21(月) 00:50:49 |
  2. URL |
  3. 小奈鳩ユウ #0TSJikig
  4. [ 編集 ]

ユウさん、こんにちは。

>パタパタって箱がバラける
ハリウッドにお願いしようかな~、カリフォルニア州ですし。
マジックなら、隣のネバダ州、ラスベガス。
しかし、ここは、made in Japanで行きたい。
日本の折り紙が逆輸入されるのはいいなぁ!
しかし、僕には、折り紙作家のようなアイデアが浮かぶわけがありませんw。
寄木細工で模型を作って、
地元の木工所に発注、ってところかな。
箱ってのは、壊れないように知恵をしぼってるんだなぁ。

5個のリンゴをおみやげに、太平洋無着陸横断飛行を成功させた翌年、
ウェナッチから三沢村に5本のリンゴの穂木が贈られました。
リンゴは、リチャードデリシャスという新品種で、
10年後には、1万本以上に達します。
5個のリンゴは、ウェナッチの商業会議所がアルコール漬けにして、
大切に保存されました。
>平和のメッセージは届く。
>受け入れる人たちは
>そこにいる。
5個のリンゴが届けば、1万本のリンゴの樹になる。
メッセージは、何枚でも届けばそれでいい。
クジラを1機失うことなんて、どうでもいい小さなこと!
  1. 2015/09/21(月) 12:15:44 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

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