馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

仮題、空飛ぶクジラ 21


「侑さん、行くよっ」
 忠義は、弁当屋に向かった。
「待って待って。侑さん、汗を拭こうよ、暑苦しいなぁ」
 安曇が、忠義を止めた。
「ハンカチとか、タオルとか、持ってないの?」
「持ってないよ」
「ドライバーとか、レンチとかは持ってるくせに?」
「冷房きいてるから、すぐに収まるよ。行こっ」
 そう言って、洋も歩き出した。
「いらっしゃいませ」
 花の声がした。
「侑さん、早くっ」
 侑は、どんな表情をしていいのか分からない。
「こんにちは」
 とりあえず、挨拶をしよう。
「こんにちは」
 花がいつもより笑顔に見えた。
 最後に、安曇が店に入った。
 安曇は思った。たぶん、私の方が、かわいい。


「侑さん、おれ、鶏の甘酢あんかけがいいな」
 メニューを見ながら、洋が言った。
「意味が分からん」
「いいねぇ、甘酢あんかけ。侑さん、おれは豚カルビにする」
「意味が分かってきたわ」
「私は、ハンバーグ」
「はいはい」
 これは、恐喝だ。
「注文がばらばらやと、作るのが手間ですよねぇ」
 侑が花に尋ねた。初めて尋ねた。
「いいえ、そんなの気にしないでください」
「私、やっぱり、鰻(うなぎ)にする」
「安曇、鰻なんかあるの?」
「あるよ、ほら」
 安曇は、壁のポスターを指差した。
「あ、おれも、鰻にする。忠義(たちゅ)は?」
「うん、おれも。やっぱり別々に作るのは手間だから」
 鰻が三つで、三千円になる。
「待て待て、安いほうに合わせようよ」
「侑さんは、唐揚げ弁当?」
「おれだけ唐揚げって、なんか変やろ」
 花の笑い声が聞こえる。
「そうかな。ちょっと贅沢に、ヒレカツくらいにしとく?」
「なんでちょっとやねん」
 もっと花を笑わせたい。
「侑さん、蒲焼きがいいなら、サンマとか?」
「なんでサンマやねん。そんなメニューないし。鰻でええやん」
「鰻って、贅沢だなぁ、侑さんは」
「なんか違うけど、もうええわ」
 侑は、向き直って、花を見た。
「今日は、鰻の蒲焼き弁当を、四つください」



  1. 2015年09月13日 22:32 |
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

コメント

侑はツッコミ担当で、そしてコメント欄で言っていたように
青梗菜さんの分身という感じなのか~。
青梗菜さんの具体的な恋愛観(恋の進め方)が明らかになりますなっ♪

自分に「良いこと」をすればよい。
それが相手の「良いこと」であったなら
最高だっ♪

侑の「もっと笑わせたい」が、いずれ
花の「もっと笑わなきゃ」になったとき、それは
最低だっ(笑)

そうなるのかは分からないけど……

うん、もっと笑わせたいっ♪
出来ればでいいから、笑ってほしい♪



  1. 2015/09/14(月) 19:32:01 |
  2. URL |
  3. 小奈鳩ユウ #0TSJikig
  4. [ 編集 ]

ユウさん、こんにちは。

子どもにいじられて、侑はたいへんだなぁw。
>青梗菜さんの具体的な恋愛観(恋の進め方)が明らかになりますなっ♪
フィクションですけど、隠せませんよね~、恋愛観。
笑わせたい意図で言ったことを、笑ってくれるのなら、
合うのではないかな、花と侑は。

それよりも、なによりも、僕が恐れるのは、
読み手に、侑のツッコミのどこがおもしろいのか、と訊かれることだなぁ。
花を笑わせた以上は、僕は、
花が笑うくらいのコントを書いたつもりでいるので。

小説、って、
魔法使いの、杖のひと振り、
かもしれない。
魔法にかかってくれない人には、
魔法使いは立場を失います。
書き手が「おもしろいこと」を書いて、
読み手にも「おもしろいこと」であったなら、
最高ですっ♪
  1. 2015/09/14(月) 21:34:22 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック URL
http://qinggengcai.blog2.fc2.com/tb.php/981-d7a9e62f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)