馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

仮題、空飛ぶクジラ 17


「でもな、メモって、ないと思うわ。ほかにお客さんおれへんのやろ?」
「うん」
「ないない。ほかにお客さんがいてて、その場で書くときだけ有効やわ」
「なるほど、そうかも」
「メモなんか用意していったらあかん」
「たしかに、きもいなぁ」
 侑は、二人を説き伏せた。
「ちゅうわけで、お弁当買(こ)うてくるわ。またなっ」
「今日は、お弁当を買いに来たのではなくて、花さんに会いに来ました、ってのはどう?」
 安曇は、急いで代替案を出した。
「安曇、それ、いい。かっこいい」
 洋は、すぐさま賛同した。
「侑さん、今日はなにを買うの?」
 安曇は、侑に訊ねた。
「ん、唐揚げ弁当」
「違うでしょ。今日は、お弁当を買いに来たのではなくて、花さんに会いに来ました」
「安曇ちゃん、それは、おれの言葉やないわ」
「唐揚げ弁当以外の言葉は、持ってないくせに」
「ほんなら、その後は、なんて言(ゆ)う?」
「花さんの返し次第だよ」
「花さんが黙ってたら?」
「え~と、すみません、唐揚げ弁当ください、って照れ笑いをする」
「安曇、それ、いい。おみごと」
 洋は、きっとなにも考えていない。
「からかってるだけ、って思われへんか?」
「だいじょうぶ」
「はい、侑さん、行ってらっしゃい」
「今日でなくても」
「今日でいいよ」
 なんだか、粗雑さを感じる。
「花さんしかいないよ、チャンスだよ」
 洋も、追い討ちをかけた。
「早くしようよ、蚊に刺されるよ」
 安曇は、足踏みをしながら侑を急かした。
 洋は、侑の腕を引っ張った。
 安曇は、侑の腰にげんこつを当てて、ぐりぐり押した。
「痛い痛い、分かった分かった」
 普通に、とりとめのない会話をして、普通に、唐揚げ弁当を買おう。
「はいはい、行ってくるわ」
 やり過ごそう。



  1. 2015年09月07日 21:37 |
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