馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

仮題、空飛ぶクジラ 14


「前のタイヤは簡単。ブレーキのここのナットを回して、ワイヤを緩めて」
 侑は、ワイヤを留めているナットを指差した。
「緩んだ?」
「あんまり」
「ナットの上についてるアジャスタを回してみて」
「あ、ブレーキが開いた」
「いいね~。ほんなら、メガネで、軸のナットを、時計と反対回り」
 片手では回らない。
 洋は、左手を添えて力を加えた。
「回った」
「いいね~。緩めてタイヤを上に引っこ抜く」
「できた」
「あとは、さっきといっしょな。おれは、後輪を組み立てるわ」


 洋は、ビードをリムにはめている。
「もう無理。入らない」
「レバーを使って、体重をかけて、押し込んでみ」
 ビードはリムの中に収まり、しかし、すぐに戻ってくる。
「もうちょい。ちょっとずつ進んでる」
 進んでいる先の、一度は収まったはずのビードが、また浮き上がってしまう。
「あ~、もうっ」
 煮詰まってきた。
「レバーを2本、突っ込んで。起こして。持ち上げるように」
「あ~、手がもう一本あったら押し込めるのに~」
 侑は、タイヤを握った。
「はい、ゆっくり抜いて」
 ビードは、レバーに沿うように滑り落ちて、リムの中に隠れた。
「は~っ、できた」
「お疲れっ、休憩」
「もういやだ~」
「次は、チューブがタイヤに入っているか調べる」
「もういやだ~」
 侑は、タイヤを握って持ち上げ、リムを覗き込んだ。
 位置をずらせながら、一周させて言った。
「完璧っ!」
 洋は、平静を装おうとして、しかし、笑顔になってしまった。


「指が痛い~」
 洋は、タイヤに空気を入れている。
「指がぜんぶ痛い~」
 侑は、工具を片付けようとして鞄を開け、軍手を見つけた。
「指が十本とも痛い~」
 侑は、軍手を振りながら言った。
「洋っ、軍手はめる?」



  1. 2015年09月01日 23:48 |
  2. 未分類
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  4. | コメント:2

コメント

私も自転車がパンクしたら自分で直してたけど
チューブを交換したことはないなあw

自転車に限らず、何かを教えてくれる存在というのは重要…。指導とは読んで字の如く、指し示し導く。そうして社会の一員であるという自覚と自信が培われる。
そういう意味で侑は洋のメンターになってる。

野球のルール、喧嘩の仕方、好きな子の誘い方、
自転車のチューブの換え方…。

習う…ということ。
習ったことを使うとき、教えてくれた人への信頼が現れてくる。信頼していなければ、習ったことを使おうとは思わない。

洋は自転車を直す度に侑への信頼を繰り返す。

ちょっと見るとこのシーンは話が横に逸れてる気がしてしまうけど、侑から指し示されたものをこれから洋が使うことを匂わせる重要なエピソードになる……のかな?♪
どうなのだろう?w
  1. 2015/09/03(木) 12:57:37 |
  2. URL |
  3. 小奈鳩ユウ #0TSJikig
  4. [ 編集 ]

ユウさん、こんにちは。

>ちょっと見るとこのシーンは話が横に逸れてる気がしてしまうけど、侑から指し示されたものをこれから洋が使うことを匂わせる重要なエピソードになる……のかな?♪
侑は、大人を崩さないのがいいなぁ。
侑は洋を対等に扱うから、洋は信頼に応えようとします。
洋を引き上げるメンターになってほしいなぁ。
とりあえずは、また天丼コントを繰り返しながら、次の展開に接続しますw。
  1. 2015/09/03(木) 22:24:30 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

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