馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

仮題、空飛ぶクジラ 04


 2年生になった春。
 初めて飛行艇を見たとき。
 安曇は、それを海に不時着した飛行機だと思った。
 港のいちばん北側の埠頭から、海に向かって伸びた防波堤の先に、飛行艇は浮かんでいた。
 心配しながら様子を見ていたが、騒ぎになることもない。
 海は、いつも通りに、広くて、怖い。
 穏やかな海に、白い機体がのんびりと浮かんでいた。


 プロペラが回り始めた。
 ゆっくりと向きを変えて、飛行艇は太平洋に向かって走り出した。
 主翼に埋め込まれた4発のエンジンの音が、風に乗って聞こえてくる。
 水飛沫(みずしぶき)が上がる。
 加速度をつけて遠ざかる。
「飛ぶ!」
 安曇がそう思ったすぐ後に、機首が空に向かい、飛行艇は離水した。



  1. 2015年08月09日 17:27 |
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