馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

仮題、空飛ぶクジラ 02


「こうたろう、って銀色のやつ?」
 安曇は、パレットに黄色の絵の具を押し出しながら、洋に訊いた。
「そう。浮かんでる飛行艇(クジラ)の中で、いちばん渋いやつ」
「かわいくないよ、あれ」
「クジラもイルカも、だいたいはモノトーンなんだよ」
「青いほうがかわいいよ」
「かわいくなくていいよ」
「こうたろうがアメリカに行くって、誰に聞いたの?」
「侑(ゆう)さん」
「あの人、頼りないからなぁ」
 安曇は、いつも侑のことを頼りないと言う。
「侑さんは、頼りなくても、エンジニアなんだぞ」
 洋も、侑のことを頼りないと思っている。
「小泉安曇(こいずみあずみ)ってのも、くどい名前だよな」
「小泉八雲と、よく間違えられるよ」
「誰だよ、それ」
「ラフカディオ・ハーン」
 忠義(たちゅ)が、割り込んで答えた。
「違うよ、たちゅ。小泉だよ。どんな聞き間違いをしたら、ハーンになるんだ?」
「だから、小泉八雲がハーンなんだよ」
「分かんないよ。そのハーンは小泉のなんだよ」
「ハーンはハーンだよ。安曇は知ってるよな」
「知ってるけど」
 安曇は、唇をとがらせた。
「もういいよ、面倒くさくなってきたよ」
「もう終わりかよぉ」
 洋は、残念そうに言った。
「知ってるよっ、耳なし芳一だろ?」

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  1. 2015年08月08日 21:24 |
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