馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

優しさ、に従って


吉野弘の「夕焼け」は、
優しい心の持ち主が、
感情を行動に移せなかったときの受難を描く。

では、優しさが生まれたときには、
すでに行動する責務を含んでいる、と言えそうだ。
抱えてしまった優しさは、
どう表すのか、何ができるのかを内包している。
そして、その時々に、自らが求める行動を、
自ら引き受けることになる。

自分にできることを探すために、
優しさを抱えている、とも言えそうだ。
だから、行動を自制し続けると、
優しさは、いつかは破綻する。
何もできないことがデフォルトになると、
何もできないつらさに耐えられなくなる。

誰かに心を寄せるような感性が機能しなくなる。
そんなふうに自分を騙さないと自制は続かない。
何も感じないほうが楽ちんに過ごせる。
優しさを、行動に移せる自分がいなければ、
その心の優しさは、優しさゆえに、
その優しさの持ち主を壊してしまうだろう。

「娘」は、すでに何も感じなくなって久しい「若者」に、
飲み込まれようとしている。



あるいは、行動を伴わない人は、
自己評価を上げることで、
優しい自分を守ろうとする。
優しくない人ほど、自分のことを優しいと思い込む。
他人のことは行動で判断するほかはないが、
自分のことは思索で判断することができる。

「作者」は、何も行動を起こさない。
ぜんぜん優しく映らない。
客観的には「若者」と同じに見える。
しかし、客観評価は低いままでも、
「娘」の気持ちが解かることで、
「作者」は自らを優しいと、読者に思わせることができる。

この詩の、不快感はここにある。
「娘」の受難に仮託して、
「作者」は優しい心の持ち主になる。
「娘」が優しくない自分の客観評価を下げれば下げるほど、
「作者」の自己評価が上がり、「作者」が優しく見える仕組みだ。
だから、作者は「娘」に過剰な自責をさせる。

僕たちは、迂闊にも、
優しい「作者」に、飲み込まれてしまった。



幸運なことに、「作者」は電車を降りた。
今頃は、詩作に夢中だ。
この隙に、「作者」の呪縛から抜け出て、
「娘」を受難から解放しよう。
まだ間に合う。
「娘」は、まだ「若者」になり切っていない。

「作者」はもういない、自由に行動していい。
次の駅で降りるふりをして、席を立て!



考えれば考えるほど、
自分の行動は危うくなる。
うまくいかないことは多いけれど、
半分でもうまくいけば上等だ。
いつかは行動それ自体が、
かつての、すべての行動を説明してくれる。

自由に行動していい。
立ち上がれ!



矛盾と不合理が詰め合わさった、
そんな世の中で合理性を貫けば、
容易に理解されなくて当然だ。
そこで語られる言葉は、
多くの人に通じる言葉ではないが、
必ず分かり合える人がいる。

自由に行動していい。
立ち上がれ!

    141202a.jpg

「作者」はもういない。
立ち上がれ!







  1. 2014年12月04日 20:31 |
  2. 優しさ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6

コメント

仲良しには、優しくするのが当たり前で、
自然にできるように思います。
決心もいらないし、何も迷わないし。
安心な仲良しだったら。

優しさについて、考えて、
立ち上がらなければならないときっていうのは、
距離が近くない人に対してなのかもしれません。
迷いがあるときは、勇気がいります。
でも、そんな優しさも、ホンモノだと思うんですよね。

娘は、こんなことで迷って、なおかつ譲らないの~?
はぁーあ。しっかりしなさいっ!
立ち上がれ!
  1. 2014/12/06(土) 03:49:11 |
  2. URL |
  3. プラトニックまいまい #-
  4. [ 編集 ]

まいまいさん、こんにちは。

優しくする、って迷いますよね。
あとあとの面倒を背負い込むリスクがあって、
いいことばかりではないから、
事情が込み入ってくると解決に手間どって、
それでも引き受け続ける間柄になれたら、
もう仲良しですね~。

そうそう、席を譲る程度のことで迷ってたら、
生きていけませんよw。
  1. 2014/12/06(土) 10:25:23 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

これは、強い宣言ですな♪

私はなあ…、譲ることに迷い、譲ったあとも迷い続けて、
オデコと脇アセ びっちょびちょ…。
そして翌日まで譲ったことに迷う。
ぐったり…。
そして、もう絶対に譲らないと考える。

もう知らない。
生きていけない…などと思いつつ
でも、また、自分勝手にワガママに譲り、迷う。
そして、びっちょびちょw

私の場合は、正しいとか優しいとかじゃなくて、
自分でも扱いに困る面倒な性分でしかないのだなあ。
いや~、ごめんなさいっ(笑)

うわ~、我ながら厄介な性分だわ~、青梗菜さん、取っ替えて下さいなっw
  1. 2014/12/06(土) 23:59:43 |
  2. URL |
  3. 小奈鳩ユウ #0TSJikig
  4. [ 編集 ]

ユウさん、こんにちは。

あははw、
>正しいとか優しいとかじゃなくて、
>自分でも扱いに困る面倒な性分
それだ~、娘が席を立てなかった理由はw。
この話は、やはり、優しさからは離れたところにあって、
作者は、こんなことで優しさというテーマを普遍化するのは違っていました。
だから、収拾がつかなくなる前に電車から降りて、詩作に励むのでしょう。

厄介な性分、ですか~w。
そのあたりは誰でも持ってるし、
逆に、持ってないと思ってる人のほうが困るなぁ。
きっと、厄介な性分の人の厄介さを引き出すのは、
厄介さを持ってない人なんだ!w

僕は、他人が面倒くさくて、嫌いなので、
なんて言い方はできるけど、わざわざ言わないのは、
そんな考え方は間違ってる、
なんて正論が返ってくるのがいやだからです。
そして、僕がいちばん面倒くさくて、嫌っているのは、
きっと、そんな正しい他人にほかならない!w
  1. 2014/12/07(日) 12:24:20 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

青梗菜さん、こんばんは!!^^

吉野さんが「夕焼け」を書いた動機は、娘が三度目の時席を立たなかったことだと思いました。

青梗菜さんがこの記事を書いた動機は、自分の優しさの表出(?)が、「(ry半分でもうまくいけば上等だ。(ry」と言いたかったからではないかと感じました。

いやあ詩ってほんっといいものですね。m(__)mツクレナイケド^^;
  1. 2014/12/07(日) 18:14:08 |
  2. URL |
  3. くわがたお #-
  4. [ 編集 ]

がたおさん、こんにちは。

いつもありがとうございますっ。
ほんと、半分でもうまくいけば上等ですよ~。
そう思えば気が楽ですw。
自分のことを、優しいと思っているのは馬鹿ですけど、
優しくないと思っているのも甘っちょろいです。
優しさは、きっと、宙ぶらりんで、
馬鹿と甘ちゃんを往復しながら、
優しさに対して注意を払い続ける人にしか生まれない、
そう思うことにしましたw。

あ、水野晴郎、久しぶりですw。
  1. 2014/12/07(日) 19:41:30 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

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