馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

スーちゃん 2/4


「私は、ごめんなさい、ごめんなさいってゆうてんの」
と言いながら、ヤチグサさんは、頭を下げた。
「私らはひどいことしたんやって思てんの。
韓国にも北朝鮮にも中国にも、
攻めてった国には、みんなひどいことしたんやって思てんの」

ヤチグサさんが生まれた頃には、
朝鮮半島はすでに日本の植民地になっていた。
朝鮮が貧しかった理由は、
日本の植民地支配だけが理由ではなかったのだろうが、
農権、商権、漁業権を侵害され、
それゆえに塗炭を舐めたのは確かだ。

ばあちゃんが、謝っても何にもならない。
しかし、軍部が、政治が、財閥がと、元凶を探り当てるより先に、
ヤチグサさんはごめんなさいと言う。
その時代を生きたひとりの、
感情の発露として頭を下げる。



フジが欠伸(あくび)をした。
「フジちゃん、欠伸してるわ」
背中を伸ばした。
「シロちゃん、伸びしてるわ。気持ち良さそうや」
頑固なばあちゃんたちだ。
自分たちの呼び方は変えない。

「日向(ひなた)に来たらええのにね」
もう五十センチほど前に出てくれば日に当たる。
フジは日陰で、それでいて、眩しそうに虹彩を細めていた。

「寒くないんかな」
「でも、足は寒いんかして、いっつもなんかの上に乗ってるよ」
それは、猫の矜持(きょうじ)というものだ。

「猫は炬燵(こたつ)で丸くなる~」
カマヤツさんが歌った。



「昔はね」
カマヤツさんの談。

「炬燵、ゆうても掘り炬燵でね、
電気なんかあれへんから木炭置いて、
そしたら、猫が入ってくんねん」

フジが居住まいを正した。
話の矛先(ほこさき)が向かった気配を察したらしい。
なぜだか、さっきから三人揃ってこちらを見ている。

「ええ気持ちで寝てるなあ、思てたら全然起きてけえへんねん。
そしたらね、酸素が無くなってしもて死んでんねんな」
「あらまぁ」
「昼間なんかは、みんな畑に行って家にはおれへんやん。
昔はね、そんなんで死ぬこともあったんよ、猫もね」

猫もね。
なるほど、猫以外も死んだということか。

「そやからかなぁ、
フジちゃんも、ほかの猫も、なんかほっとかれへんねん」



―― 続きを読みたい?







  1. 2013年03月09日 22:31 |
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

コメント

4回全部、読んでみたいですね。
で、注文なのですが、ヤチグサさんとカマヤツさんの会話に、そこにはいない第三者を登場させてほしいのですが。
「ゴドーを待ちながら」のゴドー、「桐島、部活やめるってよ」の桐島のような人物を登場させてほしいわけです。
推測ですが、それがスーちゃんなのでしょうか?
  1. 2013/03/10(日) 09:29:55 |
  2. URL |
  3. 瀧野信一 #-
  4. [ 編集 ]

正解です、
スーちゃんは、この後、登場します。
で、ここにはいません。
会話の中に現れます。
フジは役目を終えて、スーちゃんと入れ替わりに退場します。
  1. 2013/03/10(日) 12:48:34 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

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