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界 ―― 100分de名著、ブルデュー「ディスタンクシオン」 6/8


    界には縦の構造があり、みんながその中で
    卓越化の闘争をしている ……
    しかしブルデューのさらにおもしろいのは、
    横軸を置いて、界の構造を横に広げたところです。
    これにより、闘争の戦略の多様性、
    参加メンバーのハビトゥスの多様性が表現れます。
    つまり私たちは、垂直方向だけでなく
    水平方向にも広がった界のなかで
    闘争をしているのですが、そこでの「勝ち負け」は
    単に上下に一直線に連なっているのではなく、
    その戦略は非常に広くて複雑な
    「横幅」があるということになります。
    なお、その他に時間軸などが加わり、
    多次元になることがあります。

    このような界の構造は、ブルデューが想定する、
    もっともマクロな社会空間(階級)全体の
    構造と相似します。

    縦軸が資本量(社会階層)、横軸が資本構造
    (資本の種類、たとえば文化資本か
    経済資本かの違い)を表します。
    「文化資本」については、…… 簡単に述べておくと、
    文化に関わる知識や経験、学歴や教養、
    家庭のなかで前の世代から受け継がれた身体技法や
    態度といったものです。
    経済資本は文字通り、お金や財産の量です。[p49-50]

    ―― 100分de名著、2020年12月、ブルデュー、ディスタンクシオン
    ―― 岸政彦 著、2020、NHK出版



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マトリクスの、y軸の+方向が、「資本量+」、
y軸の-方向が、「資本量-」、
x軸の+方向が、「文化資本-」および「経済資本+」、
x軸の+方向が、「文化資本+」および「経済資本-」。

文化資本、経済資本ともに高いのが、ピアノ、ゴルフ、チェス、テニス。
乗馬、狩猟は、文化資本が低めに配置されている。
サッカー、廉価な赤ワインは、文化資本、経済資本ともに低い。
中心あたりに、ギター、ミュージカル・コメディ。

なんだか、よく分からないマッピングだが、
「ディスタンクシオン」の刊行は、ネット以前の、1979年。
資本量という属性で、セグメントを作ることができた時代だ。
今どきは、ピアノというハッシュタグから、資本は量れないだろう。

ネットは、参加メンバーのハビトゥスを気にすることもなく、
別の世界に住んでいるような者でもつなげてしまう。



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ブルデューのマトリクスには、アナログで、フィジカルで、
アコースティックな趣味がポジショニングされているけれど、
今どきは、趣味に費やす時間が最も長い階層は、
生まれた時からネットがある20代前半、

学生か、或いは、就職して間もない頃である。
上とか下とか、勝ち負けとか、いったい何の話だろう。
30代以降は、忙しくて、疲れていて、趣味なんかとても無理で、
不本意ではあるけれど、テレビや動画や雑誌みたいな、

受動的に時間が費やされるように、日々の生活がシフトする。
差異化、正当化、否定、嫌悪、卓越化、いったい何の話だろう。



    

    Baby, let's shake hands, Oh, let's be friends,
    Oh, baby, let's be friends, I can't come up with a better plan

    ―― Let's Shake Hands/The White Stripes
    ―― Jack White 作詞作曲、1998、Italy Records



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テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2021年03月04日 00:00 |
  2. ブルデュー、ディスタンクシオン
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