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界 ―― 100分de名著、ブルデュー「ディスタンクシオン」 5/8


      趣味(すなわち顕在化した選好)とは、
      避けることのできないひとつの差異の
      実際上の肯定である。
      趣味が自分を正当化しなければならないときに、
      まったくネガティヴなしかたで、
      つまり他のさまざまな趣味にたいして
      拒否をつきつけるというかたちで
      自らを肯定するのは、偶然ではない。
      趣味に関しては、他のいかなる場合にもまして、
      あらゆる規定はすなわち否定である。

      そして趣味 goûts とはおそらく、
      何よりもまず嫌悪 dégoûts なのだ。
      つまり他の趣味、他人の趣味にたいする、
      厭わしさや内臓的な耐えがたさの反応
      (「吐きそうだ」などといった反応)
      なのである。

    「内臓的な耐えがたさ」はさすがに
    言い過ぎだと思いますが
    (ブルデューがよく批判される所以(ゆえん)です)、
    すべての趣味に対して
    寛容な人がいないのも事実でしょう。
    「これはいい」と判断を下す際には、必ず
    「あれは駄目だ」という判断が伴うのです。[p44-45]

    ―― 100分de名著、2020年12月、ブルデュー、ディスタンクシオン
    ―― 岸政彦 著、2020、NHK出版



>そして趣味 goûts とはおそらく、
>何よりもまず嫌悪 dégoûts なのだ。
goûts は、dégoûts によって定義される。

おそらく、誇張ではなく、言い過ぎでもない。
ブルデューのハビトゥスは、異質なハビトゥスに対して、
吐きそうなくらいの嫌悪感を持つのだろう。

ブルデューには、異質な者たちとの調和を図り、
コミュニケーションを成り立たせようとするような、
そんな寛容なハビトゥスがなく、

求められているのは、差異化であり、
否定と自己正当化と嫌悪、断絶と不寛容、
仲間内だけで通じる言葉による闘争である。

闘争も、強調ではなく、言い過ぎでもない。



    200127c.jpg



    ここで重要なのは、
    趣味に関する「いい/悪い」の判断は、
    単純な記号のレベルではなく、
    自分の生き方そのものが関わっている点です。
    なぜならば、私たちは
    ハビトゥスによって方向づけられているため、
    私たちが好きになる音楽、映画、絵画、
    食べ物、服装などには、
    共通の傾向性があるからです。
    そして同時に、すでに述べたように、
    そのハビトゥスによって私たち自身が分類され、
    一定のクラスターを形成してしまうのです。

    ですから、自分が好きな映画作品を
    他者に否定されると、
    自分が好きな音楽も絵も食べ物も
    連鎖的に否定される可能性がある。
    ひいては自分そのものを
    否定されることにつながるわけです。[p45-46]



なるほど、いい/悪いの判断は、ひいては、
その人の生き方に対する肯定/否定につながる。
そんな傾向は認めてもいいけれど。

僕なら、生理的な嫌悪感だけで、
その人を否定するのは純朴に過ぎると思う。
もちろん、いい/悪い、好き/嫌いは言ってもいい。

けれども、いい/悪い、好き/嫌いだけで人を分けて、
それで人を判断しようとするのなら、
ブルデューは、間違いなく、狭量に過ぎる。

音楽や、絵や、食べものならそれでもいい。
しかし、いい/悪い、好き/嫌いだけでは、
必ず、人の意味が足りなくなってくる。

音楽や、映画や、絵画や、何でもいい、
どれだけ連鎖的に手繰り寄せても、人にはならない。
食べものや、服装なんて、人に比べたら、

少しも意味が書かれていないと思われる。



    

    She's in love with the world, But sometimes these feelings
    Can be so misleading, She turn and says "are you alright?"

    ―― Fell in Love with a Girl/The White Stripes
    ―― Jack White 作詞作曲、2002、XL Recordings



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テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2021年03月03日 00:00 |
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