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ハビトゥス ―― 100分de名著、ブルデュー「ディスタンクシオン」 3/x


    …… いちばん好きな映画監督は
    フィンランドのアキ・カウリスマキ、
    あるいは映画好きにはファンの多い
    ポール・トーマス・アンダーソン。
    いかにもインテリでしょう?

    音楽はジャズが好きで、
    趣味でウッドベースを弾きます。
    ミュージシャンで言うと、
    ボサノバではジョアン・ジルベルト、
    クラシックではグレン・グールド、
    ロックではエイミー・マンが好きです。…… [p10-11]

    ―― 100分de名著、2020年12月、ブルデュー、ディスタンクシオン
    ―― 岸政彦 著、2020、NHK出版



僕なら、誰もが知っていそうな、
ヒッチコックや、キャプラを挙げる。
直近で、聴いているのは、
ヨアソビと、ヨルシカでいい。

ジョアン・ジルベルトも、グレン・グールドも、
エイミー・マンも、とてもメジャーな人たちで、
そんなものは、取り立てて差異も、それほどに弁別も、
たいした卓越さもないと思っている。

演歌なら、石川さゆり、ちあきなおみ、
彼女たちの歌は、どんなジャズ・ヴォーカルよりも好きだ。
楽器なら、幼稚園の頃は、ピアノを習い、
中学生からは、ギターを弾いている。



    200223a.jpg



今年になって読んだ小説は、
姫野カオルコ、川上未映子、恩田陸。
>いかにもインテリでしょう?
では、僕は、いかにも馬鹿っぽいでしょう?

ってか、難解さやマイナーさをありがたがるような、
中二病みたいな気負いがないんだ。
ってか、岸政彦は、あえて、いかにもを並べていて、
僕も、わざわざ、外し気味に並べているのだろう。



    おもしろい話が残っています。
    アメリカの哲学者ジョン・サールが、
    君はどうしてあんなに難解な書き方をするのかと
    フーコーに聞いたところ、
    フランスで認められるためには
    理解不可能な部分が10%はなければならない
    と答えたというのです。
    驚いたサールがのちにブルデューにこの話をしたところ、
    「10%ではだめで、少なくともその二倍、
    20%は、理解不可能な部分がなければ」
    と語ったそうです …… [p23]

アメリカの物理学者アラン・ソーカルに聞いたなら、
「20%ではだめで、少なくともその二倍、
40%は、理解不可能な部分がなければ」
と語ったのかもしれない。

いっそのこと、100%理解不可能でもいい。



    …… 私が好きなジャズの世界では、
    たとえジャズを好きになったきっかけが
    ビル・エヴァンスだったとしても、
    ある時を境に「ビル・エヴァンスが好きだ」
    とは言いづらくなってきます。
    ビル・エヴァンスは素晴らしいピアニストですが、
    あまりにメジャーすぎて、
    いまさらそれを好きだというのが、
    なんだか恥ずかしくなってくるからです。

    ところがジャズファンとして
    それなりに年季が入ってくると、
    「ビル・エヴァンスは逆にいちばんいいよね!」
    と言ったりします。
    まずはじめに、あまりにメジャーすぎるものが
    好きだということが、
    だんだん恥ずかしくなってくる段階があります。
    「よくわかってない素人」だと
    思われる危険性があるのです。
    でも、その次の段階に進むと、
    自分の位置が切り下げられる心配をすることなく、
    のびのびと「ベタなもの」の価値を
    宣言することができるようになります。
    自分がどのポジションにいるかに従って、
    それは「恥ずかしくて言えない」ようなものなのか、
    それとも「逆にいい」と言っても
    大丈夫なものなのかを、瞬時に、反射的に、
    身体的に把握する感覚。
    それがブルデューのいう
    「実践感覚」(のひとつ)です。[p57-58]

例えば、みんなが観ているジブリの映画の話をしても、
少しも、分かってないと思われる危険性はないと思うけれど。
何を素材にして語るか、ではなくて、
素材についての何を語るか、で分かってなさが決まるもの。

僕には、むしろ、インテリの実践感覚のほうが恥ずかしい。



   

    When I say nothing, I say everything
    Yeah, when I say nothing, I say everything

    ―― Lazaretto/Jack White
    ―― Jack White 作詞作曲、2014、Third Man Records



201203.gif

テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2021年02月19日 00:00 |
  2. 自分らしさ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

コメント

ソーカル事件というのがありましてね、面白半分に素人が、精神医学やらなんやらの知識を織り交ぜて難解な誰にもわかりそうにない論文ごときものを書いたら、冗談が本気にされて、真面目な論文だと見做されちゃって、イグノーベル賞を貰ったという話。
この事件がきっかけで、フランス現代思想というものは要は、何なのか?という話になった訳ですよね。
ドゥルーズ然り、フーコー然り、デリダ然り。
要するに、難解で深遠なこと言っているようだけど、言葉遊びにすぎないんじゃないかって。
僕の大学時代に、こういう思想が流行った訳ですが、思想バブル、僕は全く理解できなかったけど、それが正常だったんですよね、今思うと。
音楽でも「フルトヴェングラーかカラヤンか」なんて本がありますが、フルトヴェングラーを聴く人は深遠で、カラヤンを聴く人は低俗という理解がある。
しかし、普通に考えれば、フルトヴェングラーだって変な演奏もするし、カラヤンだって良い演奏もする。
フランス現代思想にイカれた人と、フルトヴェングラーは深遠だ。という人達は結局同じ穴の狢ということか。
哲学でも何でも、インテリだけに通用する言葉で固まって閉じた世界を作っても仕方ないんだな。大衆の世界に降りてこないと〜哲学と言えないでしょ、そもそも。
  1. 2021/02/19(金) 00:22:54 |
  2. URL |
  3. oki #ibS8y52A
  4. [ 編集 ]

okiさん、こんにちは。

>ソーカル事件というのがありましてね、
ソーカルは、100%理解不可能を書いてみた。

>この事件がきっかけで、フランス現代思想というものは要は、何なのか?という話になった訳ですよね。
>ドゥルーズ然り、フーコー然り、デリダ然り。
みんなで、分かったふりをしてしまったw。

>要するに、難解で深遠なこと言っているようだけど、言葉遊びにすぎないんじゃないかって。
>僕の大学時代に、こういう思想が流行った訳ですが、思想バブル、僕は全く理解できなかったけど、それが正常だったんですよね、今思うと。
うん。
分からないことは、分からなくていい。

>フルトヴェングラーを聴く人は深遠で、カラヤンを聴く人は低俗という理解がある。
>しかし、普通に考えれば、フルトヴェングラーだって変な演奏もするし、カラヤンだって良い演奏もする。
少なくとも、録音はカラヤンの方がいい。

>哲学でも何でも、インテリだけに通用する言葉で固まって閉じた世界を作っても仕方ないんだな。大衆の世界に降りてこないと〜哲学と言えないでしょ、そもそも。
各自が、それぞれにやるものですよね、哲学は。
  1. 2021/02/19(金) 00:47:54 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

トマス・アクィナス神学大全第二部を日本語訳で読もう

先生のブログは質的に断トツです。他者の追随を許さない。

しかし、habitus についての御記述は、パルメニデス以来の哲学史の中では、しかも、トマス・アクィナスを考慮に入れた場合、minorです。

ただの傾向性ではない、確かに傾向性だけど、それ以上のものです。

持続という視点で考え直されたら、いいかもしれません。
  1. 2021/02/19(金) 17:04:39 |
  2. URL |
  3. 金子隆徳 #-
  4. [ 編集 ]

金子さん、こんにちは。

>持続という視点で考え直されたら、いいかもしれません。
はい、至らない投稿ですみません。

ここで僕が書いているのは、
ブルデューの術語としてのハビトゥスです。
僕には、ブルデューのハビトゥスから、
病気や健康、トマス・アクィナスの神学にまで、
言及する能力がありませんので、ご容赦くださいませ。

>しかし、habitus についての御記述は、パルメニデス以来の哲学史の中では、しかも、トマス・アクィナスを考慮に入れた場合、minorです。
ブルデューの哲学史での位置づけも、僕には分かりません。
金子さんは、僕みたいな浅学を相手にしないほうがいいと思うのです。
コメント、ありがとうございました。
  1. 2021/02/19(金) 18:05:54 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

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