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整備手帳 ―― 雨が降る度に、洗車をしなくてよかったと思う 3/3


    死は、失敗の好みを持ち、天分を持つような人間の庇護者である。
    成功を収めなかった者、
    成功への執念を燃やさなかったすべての者にとっては、一個の褒賞である。
    死はその種の人間のほうに理ありとする。

    死は彼らの勝利なのだ。
    逆に死は、成功のために骨身を削り、
    ついに成功を収めた人間たちにとって、
    なんという残酷な否認、なんという強烈な平手打ちであることか!

    ―― 生誕の災厄/エミール・ミハイ・シオラン 著
    ―― 出口裕弘 訳、1973、1976、紀伊國屋書店



利口なシオランなら、生きるとか、死ぬとか、
そんな丸ごとが分かっていたのだろう。
愚かな僕には、そんなのは大きすぎて扱えないし、
生と死が、同じ位相で語れるのかさえも分からない。

掴みどころのない話で煙に巻くことはできなくて、
身の周りの、小さなものごとしか語れないから、
「死」に「雨」を代入して、下らないけれど、洗車の話にしてみる。
洗車をした次の日には、なぜか雨が降るんだ。



    雨は、失敗の好みを持ち、天分を持つような人間の庇護者である。
    成功を収めなかった者、
    成功への執念を燃やさなかったすべての者にとっては、一個の褒賞である。
    雨はその種の人間のほうに理ありとする。

    雨は彼らの勝利なのだ。
    逆に雨は、成功のために骨身を削り、
    ついに成功を収めた人間たちにとって、
    なんという残酷な否認、なんという強烈な平手打ちであることか!



恋愛の話にして、「失恋」を代入してもいいし、
信頼の話にして、「不信」に置き換えてもいい。
とにかく、何もしないほうがいい、ってことだ。
雨が降るたびに、洗車をしなくてよかったと思うだけでいい。

そう思うだけで、生涯を通じて、
一度もクルマを洗わなくても済ませることができる。
一度も恋をしなくても、一度も信頼を得なくても済む。
雨が降る度に、失恋する度に、不信に陥る度に、

シオランの嘲笑が聞こえるが、
僕は、謹んで軽蔑の言葉を申し上げようと思う。



    191010a.jpg

    …… わたしが軽蔑とよぶのは、
    ある自由原因を軽視しようとする、精神の傾向だ。
    この場合に、自由原因は …… わたしたちよりもはるかに力が劣るので、
    わたしたちに対しては善も悪もなしえない。

    ―― 情念論/ルネ・デカルト著
    ―― 谷川多佳子、1649、2008、岩波文庫



手に入れられなかったぶどうを、
酸っぱいぶどうだったことにする、って話はあるが、
甘いぶどうだったとしても、
手に入れられないほうがいい、って話だ。

愚かな僕は、今日も、明日も、身の周りの、
小さくて下らないものごとを積み上げてみよう。
僕は、利口なシオランを軽蔑しているから、
シオランは、僕に対して、善も悪も為し得ない。

明日、世界が終わるとしても、
僕は、今日、クルマを洗うんだ。



    

    正しくなくていいから くだらなくてもいいから
    僕はあなたの あなたの 本当を知りたいから

    ―― ノンフィクション/Goose house
    ―― 平井堅 作詞作曲、2017、Ariola Japan



    「なんだ、こんな ぶどう。
    うまそうにみえるけど、
    ほんとうは すっぱいに きまってらあ。
    たべてなんか やるもんか!」

    ―― 「きつねと ぶどう」、イソップどうわ 1年生/イソップ 原作
    ―― 三田村信行 編著、2001、偕成社



テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2019年10月12日 00:04 |
  2. ラパン/ミニ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:13

コメント

シオランは無信仰だったのですね。
来世の存在を信じていたなら、そんな事は言えない。
来世はないと証明されたわけではないですから、不条理な死をとげた人の家族だったり親族だったりにとっては、来世の存在は祈りにも似たものだと思う。
不条理といえば、大型台風が首都圏直撃で大変ですよ。
この前の台風で被害を受けた千葉はもう停電が広い地域で発生してます。
ほんと、生きるのは大変だ。新聞配達なんか、やらなくてもいいのに〜。
前回の台風15号の時は、ちょうど休刊日と重なったんですよねー。
シオランがこの状況を見れば、嘲笑するのかな?
それは、やはり、真面目に生きる人への冒瀆だと思う。
  1. 2019/10/12(土) 09:25:39 |
  2. URL |
  3. oki #ibS8y52A
  4. [ 編集 ]

色々なものを代入させても意味が通るから面白いです。

シオランは「死」は成功者には「罰」で
失敗者には「賞」だと言ってるのかな

でも変です
「死」は平等に与えられますから。
成功者も自分が将来死なないとは認識してない。
不慮の事故での突然な死を迎えることもあるから、
人は懸命に生きると思います。

「賞」なら、自分から進んで受け取りに行けばいい。
でもそうはしない。
怖くて自分で死なないと言う人も多いし、
死ぬしかない、を繰り返す人も多いけど、
「自殺したら」とは勧めない。
「死んだ気で頑張れば」という仮定で話をすることはあっても。
なので「賞」ではないと思います。

どういう経緯でそういう結論を出したのかがわからないけど、
出した結論が間違ってる証明問題の過程を読み解くのは
不可能だと思います。

成功への執念を燃やす人をいたずらに貶めて自分をなごましてる。
自分が執念燃やすことを諦めたから「かっこ悪い、どうせ死ぬのに」と
バカにすることでごまかしてる。どっちがかっこ悪いねん。

私は「成功」って「より善く生きる」だと思います。
市井の名もなきよりよく生きようともがいてる人まで含んでると思います。
だからシオランの悪意は受け取らないし、
そうやって返品されてきた悪意でシオランが苦しむなら
それは私のせいではなく、シオランの自家中毒ではないかなと思います。
お気の毒様ですけど、もう亡くなってますし。

またこの著作を残したことには一定の敬意を示します。
似たようなことを現代で考える人がいたら、
「あ、それ、全然オリジナルじゃなくて、
とっくの昔にシオランて人が言うてることだから」と
言えますから、


>明日、世界が終わるとしても、
>僕は、今日、クルマを洗うんだ。
「たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える。」
https://www.motivation-up.com/word/010.html
を思い出しました

たとえ、将来地球が人類にとって住みづらい場所になっても
私は子供を育てて、次世代を育む人とつながるでしょう。
(自分の)親から産むんじゃなかったと言われても
生まれてきたものとして自主的にテーマは見つけられた。
(将来、万一)子供になぜ産んだと責められても
産んで育てたことは意味があったし、
子供には子供に自主的にテーマを見つけてもらいたいです。

りんごの木と子供は違うけど。
ルターは聖職者で子供をもうけられないから
りんごに例えたのかもと拡大解釈してしまいました。

次世代育成は綺麗事じゃなく、髪振り乱してなりふり構わないものに思いますし、人生ってもともとそう言うものだと思う。

報われなかったり、理不尽な目に遭う方が多くて、傷つくことばかり、といえばそうかもしれない。
賢い人はそんなことに手をつけず腕組みして私をバカにしてるかもしれない。
でも分かり合える人と出会える瞬間は何ものにも変え難く、
特にここのブログは学びが多いです。

死後の世界はいろんな考え方があるし特定の宗教を選べないですが、もしあるとしたら、私はあったことのない祖母や、介護したけど亡くなった義父に
会えるのが今から楽しみです。
「見てたよ、よう頑張った」と褒めてくれると思うから。

長文乱文すいません
  1. 2019/10/12(土) 13:36:30 |
  2. URL |
  3. ランタナ #bAcQnUEc
  4. [ 編集 ]

okiさん、こんにちは。

>シオランは無信仰だったのですね。
ですよね。

>来世はないと証明されたわけではないですから、不条理な死をとげた人の家族だったり親族だったりにとっては、来世の存在は祈りにも似たものだと思う。
okiさん、分かりやすい説明です、美しいっw。

来世なんて、生まれてから死ぬまでの、生の外側の話です。
人が語れるものごとではないと、ひとまずは、そう答えます。
でもね、僕は、まったくokiさんに同意しますわ♪

>不条理といえば、大型台風が首都圏直撃で大変ですよ。
無理があるなぁ、その接続w。

>この前の台風で被害を受けた千葉はもう停電が広い地域で発生してます。
>ほんと、生きるのは大変だ。新聞配達なんか、やらなくてもいいのに〜。
>前回の台風15号の時は、ちょうど休刊日と重なったんですよねー。
はい、ごもっともです。

>シオランがこの状況を見れば、嘲笑するのかな?
お~、戻したね~!

>それは、やはり、真面目に生きる人への冒瀆だと思う。
お~、つないだね~!

真面目に生きる人は、賞罰なんて考えてないもん。
真面目な人は、損得抜きに真面目さを尊重しているよなぁ。
そうでない人は、何のために真面目でいるのかが、
明確でなければ真面目になれないし、
さらには、役に立たない真面目さを嘲笑するんだ。
  1. 2019/10/12(土) 15:44:45 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

ランタナさん、こんにちは。

>シオランは「死」は成功者には「罰」で
>失敗者には「賞」だと言ってるのかな
だったら、失敗者には、受け容れやすいよね。

>成功者も自分が将来死なないとは認識してない。
そういうときは、本当には、って便利な言葉がありますw。
成功者は自分が将来死なないとは本当には認識してない、ってことにする。
本当の意味では、なんてのも使い勝手がいいw。
何も言っていないのに、何かを言った気になれる。

さておき、失敗者には、自分が言っていることが正しい、という、
根拠のない図々しさがあって、逆に言えば、
自分が言っていることが正しい、というのが失敗の元凶になっている。
いつまで経っても、聞く耳を持たないから失敗するんだわ。

でも、こんな世の中だもん、失敗したからといって、
すべてが自己責任ってわけでもないし、
それに、何度か失敗したくらいでは、直ちに失敗者にはなりませんよね。
だから、失敗しても、罪もないし、罰もない。
でも、失敗者であり続けることは罪であり、
そうあり続けることがすでに罰だと思います。

>どういう経緯でそういう結論を出したのかがわからないけど、
>出した結論が間違ってる証明問題の過程を読み解くのは
>不可能だと思います。
失敗者は、考え方は人それぞれ、ってことで煙に巻きます。
信条とか、美意識とか。
あるいは、成功者には失敗者の気持ちは分からない、とか。

そんなこんなで、失敗者ってのは、
失敗者であり続けることを思考の前提にしています。
取り急ぎ、一応の定義とします。

失敗者とは、失敗者であり続ける意思である。

もうちょい、続く。
  1. 2019/10/12(土) 15:46:46 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

>成功への執念を燃やす人をいたずらに貶めて自分をなごましてる。
>自分が執念燃やすことを諦めたから「かっこ悪い、どうせ死ぬのに」と
>バカにすることでごまかしてる。どっちがかっこ悪いねん。
家族は壊れて、恋人とは別れて、友人は去って、
自分は、自分の内側から発生した毒性物質によって中毒死するでしょう。
それを勝利と呼ぶのは、その人の勝手です。
自論を補強するために、シオランを引くのも勝手です。

>「あ、それ、全然オリジナルじゃなくて、
>とっくの昔にシオランて人が言うてることだから」と
>言えますから、
もとより、家族も恋人も友人もいない人が、自己正当化のために、
シオランの受け売りをするのも、その人の勝手です。

当然、各自が自分に都合のいいところを引きますが、
僕なら、こんなのが好きですわ。

    わたしたちは自分を無意味だと思えば思うほど、
    ますます他人を軽蔑する。
    そして自分の無意味が明らかになると、
    他人はわたしたちにとって存在さえしなくなる。



>(将来、万一)子供になぜ産んだと責められても
>産んで育てたことは意味があったし、
>子供には子供に自主的にテーマを見つけてもらいたいです。
どうしても、その辺りに行き着いてしまいますが、
子供が、なぜ産んだ、って責めるのは、
親が答えられないのを知っているからです。
生きるとか、死ぬとか、その目的とか、その意味とか、
大人だからって、そんな丸ごとが分かっている訳ではない。
なぜ人を殺してはいけないのか、とかも同じかな。
大人は、子供が思っているほど大人ではありませんから。

>次世代育成は綺麗事じゃなく、髪振り乱してなりふり構わないものに思いますし、人生ってもともとそう言うものだと思う。
利口な人たちからは、愚かに思えるのかもしれないけれど、
愚かな人たちは、何のために生きるのか、なんて考えてないもんw。
利口な人は、自分が何のために生きているのかが、
明確でなければ生きられないし、
さらには、他人の人生まで、意味がないって嘲笑するんだ。

    わたしたちは自分を無意味だと思えば思うほど、
    ますます他人を軽蔑する。
    そして自分の無意味が明らかになると、
    他人はわたしたちにとって存在さえしなくなる。
    ―― 時間への失墜/エミール・ミハイ・シオラン 著
    ―― 金井裕 訳、1964、2004、国文社

そうか~、自分を失敗者だと思っている人は、
他人を軽蔑するんだな。
同意するよっ!
(=・ω・=)っ!

明日、続くかも。
  1. 2019/10/12(土) 20:01:07 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

まあ、こっちは何事もなく、台風過ぎていったようですけどね、これが数十年に一度の災害というなら、もう生きているうちは、こんな災害にはあわないと。
けど、問題点もあれこれ。東京の某区は、避難所に浮浪者というか、路上生活者は受け容れないと。なるほど、生死がかかっていても、同じ人間でも、排除する訳ね〜。
雨は、富裕者にも、浮浪者にも平等に降る。
同じ人間を富裕者だ、浮浪者だと勝手に区別するのは、それ自体人間の勝手な理屈にすぎない。
シオランなら何という?
  1. 2019/10/12(土) 23:31:04 |
  2. URL |
  3. oki #ibS8y52A
  4. [ 編集 ]

okiさん、こんにちは。

>東京の某区は、避難所に浮浪者というか、路上生活者は受け容れないと。なるほど、生死がかかっていても、同じ人間でも、排除する訳ね〜。
なるほどなぁ。

>シオランなら何という?
死は路上生活者の勝利なのだ、って言うのかな。

それより、多摩川で氾濫で、
世田谷区が水浸しだけど、
okiさんちはだいじょうぶ?
  1. 2019/10/12(土) 23:44:08 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

いや、だから、世田谷区も広いですから(何しろ90万人も住んでいる)、こっちは多摩川からは相当離れているので影響ありません。ご心配いただきありがとうございます。
世田谷区が水浸しって、離れているとそう感じちゃうのか、笑
  1. 2019/10/12(土) 23:55:07 |
  2. URL |
  3. oki #-
  4. [ 編集 ]

>ご心配いただきありがとうございます。
へへへw。

>世田谷区が水浸しって、離れているとそう感じちゃうのか、笑
そうなんだわ〜w。
たしかに、仮に、大和川が氾濫して住吉区が水浸しでも、
うちには影響ないんだけどw。
よかった、よかった♪
  1. 2019/10/13(日) 00:05:07 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

青梗菜さん、おはようございます!!^^

>    死は、失敗の好みを持ち、天分を持つような人間の庇護者である。
>    成功を収めなかった者、
>    成功への執念を燃やさなかったすべての者にとっては、一個の褒賞である。
>    死はその種の人間のほうに理ありとする。
幕の内最高優勝とか窮乏を切り抜けるとか改善の結果を出すとかが成功なのでせうか?いずれにしても死は、生きようとすることに対してのある意味?敗北でわないかと思いましたが、思いました。m(__;m
  1. 2019/10/13(日) 07:23:27 |
  2. URL |
  3. くわがたお #-
  4. [ 編集 ]

がたおさん、こんにちは。

>幕の内最高優勝とか窮乏を切り抜けるとか改善の結果を出すとかが成功なのでせうか?
ひとつひとつは、小さくて下らないと思うんですよ。
幕の内最高優勝はたいしたもんだけどw、
僕の周りの成功なんて、小さくて下らないものごとばかりで、
クルマがきれいになるとかね。

僕は小さくて下らないものごとしかできないんだから、
ひとつひとつていねいに積み上げるしかないよ!

>いずれにしても死は、生きようとすることに対してのある意味?敗北でわないかと思いましたが、思いました。
生と死を正対させて、一緒に語ってはいけないのかもな。
>生と死が、同じ位相で語れるのかさえも分からない。
  1. 2019/10/13(日) 11:16:16 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

ランタナさん、こんにちは。

>報われなかったり、理不尽な目に遭う方が多くて、傷つくことばかり、といえばそうかもしれない。
>賢い人はそんなことに手をつけず腕組みして私をバカにしてるかもしれない。
その人は 礼儀も作法も、相手への敬意も知らない人なのかもしれない。
信頼に値しない人なのかもしれない。
明日、私をバカにして、傷つけられそうな気がする。

>「たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える。」
それでも、今日、私は礼を尽くそう。

>「見てたよ、よう頑張った」と褒めてくれると思うから。
褒めてくれる人は、必ずいて、

>分かり合える人と出会える瞬間は何ものにも変え難く、
褒めてくれる人と、必ず出会う!
  1. 2019/10/13(日) 11:18:20 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

>>分かり合える人と出会える瞬間は何ものにも変え難く、
>褒めてくれる人と、必ず出会う!
御意っ.°(ಗдಗ。)°.
  1. 2019/10/13(日) 12:07:00 |
  2. URL |
  3. ランタナ #bAcQnUEc
  4. [ 編集 ]

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