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遅れて来た者たち 1/x


種村季弘さんが亡くなってちょうど一年になる。
とてつもない物知りで、博覧強記という言葉がぴったりの人だったが、興味の好みは明確で、不思議なもの、いかがわしいもの、弱いもの、そして「小さいもの」であった。

亡くなる半年ほど前に、『江戸東京≪奇想≫徘徊記』を著した。
気の向くまま東京のあちこちを歩きながら、江戸随筆を渉猟し、記憶も重ねて、それぞれの土地に伝わる不思議な物語を解読してゆく。
池袋に生まれ、東京だけでも十回は引っ越した種村さんならではの著作だった。
ところがかつて住んでいた土地を訪ねはじめると、記述に慨嘆が多くなる。
なにしろ記憶にある風景は消え、高層ビル群に変わってしまった場所ばかりだからだ。

だからこそ両国界隈で、覚えていた駄菓子屋がまだ健在で、子供たちが近くで遊んでいると大いに喜ぶ。
そして以来、種村さんは「小さいものへと目が行きがちになる」のだ。
しかし結局小さなものはなかなか見当たらず「もう成長はいい加減たくさん」と嘆くのである。

さて、現在の状況はさらに凄い。
八月の日曜日、私は都市計画を学ぶ若い友人たちと都心を三時間ほど歩き、超高層ビルと巨大ビルの乱立状態を見て回った。
これらはなじみの風景を消しただけではない。
巨大投資の産物だから百年二百年は醜くとも残る。
未来をも喰っているのだ。
種村さん、見ないでよかったよ。

―― 本を読む。―― 松山巖書評集
―― 松山巖 著、2018、西田書店



    なるほど、種村さんは、
    不思議なもの、いかがわしいもの、
    弱いもの、そして小さいものが好きだった。
        だからといって、当然に、
        公明正大なものが嫌い、
        なんて措定はできないけれど、

    種村さんは、明瞭なもの、健全なもの、
    強いもの、そして大きいものが嫌いだった、
    と短絡しておこう。
        しかし、とてつもない物知りで、
        博覧強記という言葉がぴったりなら、
        大きいものだって嫌わないと思う。

    >種村さん、見ないでよかったよ。
    見ないでよかった、と思うのは松山巖であるが、
    種村さんも、きっと、そう思うに違いない。
        乱立状態、醜くとも残る、未来を喰う、
        松山巖によって選ばれた言葉は、
        きっと、種村さんの気持ちにも添うのだろう。

    種村さんには、駄菓子屋に限らず、
    例えば、ビルの1階に入ったコンビニの近くでも、
    子供が遊んでいるだけで喜んでほしかった。
        コンビニの近くでも、子供たちは、
        小さいものを見つけるんだ。
        大人が探しても見つからないものを。

        いつの時代でも、子供は、
        不思議で、いかがわしくて、
        弱くて、そして小さいから。



    

    どんなときも どんなときも ビルの間 窮屈そうに
    落ちて行く夕陽に 焦る気持ち溶かして行こう

    ―― どんなときも。/槇原敬之
    ―― 槇原敬之 作詞作曲、1991、WEA MUSIC



テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2019年01月28日 18:07 |
  2. 好き嫌い
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

コメント

青梗菜さん。

他人のブログの記事を引用し、自分のブログに於いてそれに批判的に解釈することはわたしもやっています。けれどもそういう場合は参照元になった記事のリンクを表示するのがエチケットではありませんか?

少なくともわたしはそう思っていますし、そのように実行しています。

おそらくそちらの言い分は
「申し訳ないが、わたし=青梗菜は、「Takeo」の言葉をただの一言も引用してはいない。わたしは松山巌の書籍から松山の書評を引用しただけだと言ったところでしょう。

結構です。

もう言葉をかわすこともないでしょう。

さようなら。



  1. 2019/01/28(月) 18:14:45 |
  2. URL |
  3. Takeo #KrjhbhPI
  4. [ 編集 ]

Takeoさん、こんにちは。

>おそらくそちらの言い分は
>「申し訳ないが、わたし=青梗菜は、「Takeo」の言葉をただの一言も引用してはいない。わたしは松山巌の書籍から松山の書評を引用しただけだと言ったところでしょう。
はい、その通りです。

>さようなら。
はい、然るべく!
  1. 2019/01/28(月) 18:45:52 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

引用の本は、「亡くなって一年」とありますが、相当古い記事ですね〜、笑。
しかし、青梗菜さんは、種村季弘についてもご存知なの?
僕は、恥ずかしながら、種村の名前は、板橋区立美術館でやった「種村季弘の眼」という展覧会で初めて知りました。
もう、ほとんど覚えてないけど、ゲストと講演会みたいなものやって、「熱海でどんちゃん騒ぎした」とか言っていたなあ。懐かしい。
図録というか単行本にサインしてもらいましたよ
とはいえ、種村について、略歴とか挙げておかないと、僕も含めてコメントしづらいぞ。
  1. 2019/01/28(月) 22:12:12 |
  2. URL |
  3. oki #-
  4. [ 編集 ]

okiさん、こんにちは。

>しかし、青梗菜さんは、種村季弘についてもご存知なの?
ご存知ないよ〜♪

>とはいえ、種村について、略歴とか挙げておかないと、僕も含めてコメントしづらいぞ。
分かるけど、okiさん、そこはいい。
種村季弘でなくても、誰でもいいんだ。

高層ビルと駄菓子屋を正対させて、
弱くて小さいものが良いとするテンプレートは、
鉄板でできている。
何万回トレースしても、まだ使えるんだな。
もう1つ、鋼鉄製のテンプレがあって、
それは、今から書こうと思ってる。
有史以来、僕たちに受け継がれてきたけれど、
まだ使用に耐えるんだわ。
  1. 2019/01/28(月) 23:58:07 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

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