FC2ブログ

tetsugaku poet

qinggengcai

哲学、思想、政治、戦略、戦術 (`ε´) 4/x


高校の、たぶん、2年の夏休みに、
夏目漱石の『行人』を読んだ。
どんな話だったのかは、
まるで思い出せないのに、
ここだけは、しつこく憶えている。


    兄さんは自分が鋭敏なだけに、
    自分のこうと思った針金のように際どい線の上を渡って生活の歩を進めて行さます。
    その代わり相手も同じ際どい針金の上を、
    踏み外さずに進んで来てくれなければ我慢しないのです。
    しかしこれが兄さんのわがままから来ると思うと間違いです。

    兄さんの予期通りに兄さんに向かって働きかける世の中を想像して見ると、
    それは今の世の中より遥かに進んだものでなければなりません。
    従って兄さんは美的にも智的にも乃至倫理的にも
    自分ほど進んでいない世の中を忌むのです。
    だからただのわがままとは違うでしょう。


こんなメッセージを受け取ったら、
僕なら、自分のわがままを、
疑わざるを得なくなる。
繰り返される、わがままの否定に、
却って、わがままを自認したくなる。

「哲学」でも、「思想」でも、
何と呼ぶのも勝手にすればいいけれど、
誰もが、針金の上を歩いている気になって、
誰もが、わがままではないつもりになって、
ただのわがままを言っているのかもしれない。

世の中には、僕のように鈍感で、
美的にも、知的にも、倫理的にも劣っていて、
立派なことは何も言えない人がいて、
それでも、一つくらいは、いいことがある。
その代わり、相手は、

僕のわがままを聞かなくても済む。
ただのわがままとは違うわがままを。



    ―― 行人/夏目漱石 著、1913、1952、新潮文庫



    

    ―― 流れ星/スピッツ
    ―― 作詞、作曲、草野正宗、1999、ポリドール



テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2018年08月07日 21:27 |
  2. 政治
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

コメント

青梗菜さん、こんばんは!!^^

>    兄さんの予期通りに兄さんに向かって働きかける世の中を想像して見ると、
>    それは今の世の中より遥かに進んだものでなければなりません。
美縛りかつ智縛りかつ倫理縛りって超禁欲?的と解釈しました。m(__;m
  1. 2018/08/08(水) 20:37:36 |
  2. URL |
  3. くわがたお #-
  4. [ 編集 ]

がたおさん、こんにちは。

>美縛りかつ智縛りかつ倫理縛りって超禁欲?的と解釈しました。m(__;m
自分ほど進んでいない世の中を忌む、ってのは、
自分は利口、自分以外は全部馬鹿、ってことだわ♪
縛られて身動き取れないのが気持ちいいの。
SMみたいなもんだわw。
  1. 2018/08/08(水) 21:16:42 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #De6CjWPI
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック URL
http://qinggengcai.blog2.fc2.com/tb.php/1700-8d36682b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)