馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

Dancer in the Dark ―― of the darkness 2/4


 原作の「cast」によれば、
 Bill.
 Age 40. Policeman who let Selma live in a trailer behind his house.
 A well-built man.

 ビル。
 40歳。セルマにトレーラーハウスを貸している警察官。
 恰幅がいい。

 部屋のドアにペンキを塗っていた。
 Tシャツとジーンズが似合っていた。
 星条旗が風に揺れていた。

 公開当時の合衆国の大統領は、
 William Jefferson Clinton/ウィリアム・ジェファーソン・クリントン、
 彼の愛称は、「Bill/ビル」だ。

 ビル役のDavid Morse/デイビッド・モースは、
 おかしいくらいにビル・クリントンに似ている。
 つまり、監督ラース・フォン・トリアーは、
 とても分かりやすくビルに合衆国を象徴させていた。

 そして、セルマには、格別な思い入れで自らを重ねる。
 トリアーの娘の名前は、「Selma/セルマ」という。


 セルマが頼った国は ―― 国に限らず共同体なら当然に、
 マイノリティを冷遇する。
 60年代半ばのワシントン州の保険制度は、
 セルマに関心を示さなかったのだろうが、
 それでも、無関心なら、まだセルマには優しかった。

 警察官を殺害したセルマは、移民で、シングルマザーで、
 チェコ・スロバキアのコミュニスト。
 62年のキューバ危機、64年のベトナムへの全面介入を背景にして、
 それらのアイデンティティは、州裁判所からセルマに付与される。

 共同体の利害に反した者は、それ以外の利害に反する括りとともに、
 何重にも押し込まれて、まとめて排除されてしまう。
 嫌悪感がまとめてセルマに移される。

 それは、きっと、社会主義国への悪意や粗雑な裁判を描写したトリアーが、
 コミュニストと呼ばれるのと同じ根っこを持っていた。
 赤狩りは、終息したばかりで、
 ネオ・ナチやKKKは、まだ過去ではない。

 半世紀前、バスや映画館の座席は白人と黒人で別れていた。
 公共施設や雇用に関する人種差別を撤廃する公民権法が成立したのは、64年。
 60年代は、そんな野蛮な時代だったが、
 僕たちは、まだ時代を過去にすることができない。
 黒人差別は、決して過去の出来事ではないだろう。

        160207b.jpg

        『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
         /ラース・フォン・トリアー 著、杉山緑 訳、
         2000、角川書店
        『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
         /ラース・フォン・トリアー 監督脚本、
         2000、松竹、Asmik Ace (video、DVD)



テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

  1. 2016年02月07日 21:14 |
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