馬鹿の世界の点景になりたい。

qinggengcai

愛、って言うな 7/x


        僕たちは、特定の印象を観客に与えるために、
        劇場や、舞台装置や、小道具や、
        衣装や、台詞や、所作を支配する。
        恋の始まりにおいては、
        その相手は、まだ共演者ではない。
        共に演じているような見かけの観客だ。

        劇場は、眺めのいいハイキングコース、
        打ち上げ花火が見える丘、避暑地の高山植物園。
        舞台装置は、2両編成の電車、
        新設のアトラクション、イギリスの旧車。
        小道具は、昼ごはんが入った籐かご、
        緑色のバーベキューグリル、伊坂幸太郎の新刊。

        衣装は、ニットのカーディガン、
        小花を散らせたスカート、重そうなワークブーツ。
        ぎこちない会話と、不器用な気づかい。
        うまく呼べない名前、
        段差で大きな声になるハミング、
        かえって邪魔になる、料理の手伝い。

        やがて、恋愛が成り立てば、
        その相手は、共演者に成り上がる。
        舞台での演技も自然になるし、
        一緒に舞台裏にいても違和はない。
        役者は、舞台裏でなら、
        観客には見せないふるまいをするだろう。



        交換可能な存在を、
        交換不可能な存在に昇格させるものは何か。
        交換不可能なものを、
        僕の中から見つけるとしたら、
        それは、経歴、になる。
        共に過ごした時間になる。

        存在と時間、それらは並立ではなく、
        時間は、すでに存在であり、
        存在は、みんな時間だ。
        存在すなわち時間とするなら、
        経歴は、その本質になる。
        それは、思い出のことではない。

        それは、共に過ごした時間によって、
        変わってしまった現在である。

    151103.jpg



テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2015年11月03日 12:48 |
  2. 恋愛
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6

コメント

青梗菜さん、こんばんは!!^^

>交換可能な存在を、
>交換不可能な存在に昇格させるものは何か。
>交換不可能なものを、
>僕の中から見つけるとしたら、
>それは、経歴、になる。
>共に過ごした時間になる。
特に、このパラグラフが好きです、ヨダレ出ちゃうほどに。オっぱいや、おっぱイや、顔の好みや、その人の行動・言動だけでは、昇格しないと思うためでもあります。^^;

なお、明日休日な本日午前3時(?)身分不相応な飲酒量2~3合未満ですが、、御記事を読み、熟年離婚したくないなあなんて、思ってしまっています。^^;だって、

>それは、共に過ごした時間によって、
>変わってしまった現在である。
かけがえない(?)時間は理論上、いろいろ過ぎるほどいろいろ過ごせるはずですが、他の過ごし方ができたかと訊かれると、「そうでもない。」と言っちゃうからなんだもん。m(__;m(時間についての混乱モード)
  1. 2015/11/04(水) 03:46:50 |
  2. URL |
  3. くわがたお #-
  4. [ 編集 ]

これは詩だと感じました。
劇のために用意したひとつひとつのものに、
うまくいきますように…という願いが垣間見える。

そして『星の王子さま』を彷彿とさせる。バラと王子さまの関係。
『王子さまは、忘れないように、キツネのことばをくりかえした。
「時間をかけて世話をしてあげたからこそ、きみのバラは、きみだけの特別なバラになったんだ」』(訳 奥本大三郎)

まあ、男の方も
星のお姫さまに世話してもらったサボテンだかドクダミだかであることを忘れてはダメですがw

  1. 2015/11/04(水) 15:21:07 |
  2. URL |
  3. 小奈鳩ユウ #0TSJikig
  4. [ 編集 ]

がたおさん、こんにちは。

相手のかけがえのなさ、
それは、自分のかけがえのなさに、
支えられていると思うのです。
相手がどう思っていようが、
自分にとっては、かけがえがないから、
結局は、自己中に回収されるのかもしれないし、
願いや、祈りになるのかもしれません。
偉大なことかもしれないし、
愚かなことかもしれませんわ~。

誰かと、愚かさを共有できたら、素敵だなぁ。
それは、世の中に流通していない愛で、
誰もほめてくれませんけどね~w。
立派でないほうがいいわ、
そのほうが、信じられますw。
  1. 2015/11/05(木) 18:10:52 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

ユウさん、こんにちは。

>劇のために用意したひとつひとつのものに、
>うまくいきますように…という願いが垣間見える。
それが伝わる観客なら、
いい共演者になれそうです。

>「時間をかけて世話をしてあげたからこそ、きみのバラは、きみだけの特別なバラになったんだ」
片思いで、長期間これをやられると、
申し訳ないけど、何かが違ってくるんだな~。
恋は、そのうち治る病気でなくてはならない。

サボテンだかドクダミだか、って、
僕は、可憐なチューリップのつもりですけど~w、
色は赤で。
  1. 2015/11/05(木) 18:11:23 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

関係からしか、今は見えないという事ですかね。
過去の積み重ねを突破する力は、
何処から生まれているのか。

わちゃわちゃ絡み合って、ポンと爆発。

宇宙だって、137億年とか言うからそんなに長いのかと思うけど、
あぶくと考えれば一瞬。

ただ、繋がりは、素敵な事だと私は思うのですけど、
その正体は、わからない。
  1. 2015/11/05(木) 21:37:40 |
  2. URL |
  3. 海底まきがい #-
  4. [ 編集 ]

まきがいさん、こんにちは。

雨の一滴に、水素原子が、仮に1兆あったとして、
水素の一粒一粒は、もちろん交換可能ですね~。
その水素でなくても、どの水素でも同じ一粒。
それが原子ってものです。
では、水素一粒にも独自性を認めるとしたら、
水素一粒そのものにあるのではなく、
その一粒の経歴にあります。

宇宙の始まりから、雨粒の中に収まるまで、
まきがいさんが水素一粒の軌跡を想えば、
宇宙の中心から、宇宙の片隅の地球までを、
描き出す時空を得るでしょう。

まきがいさんの身体も、半分以上は水ですから、
雨とまきがいさんの出会いを祝福してやってください。
おそらくは、ビッグバン以来、137億年ぶりです。

雨の一滴でさえ、出会うために経歴を背負っています。
繋がりは、偶然ですが、
もう二度と同じように繋がることができない、
正体は、そんな時間の不可逆性でしょうか。

百億年かけても、千億年かけても、
宇宙が終って、また始まったとしても、
もう二度とまきがいさんと僕は、
出会いをやり直すことはないでしょう。

これからもよろしくっ、愛を込めて。
  1. 2015/11/05(木) 23:14:39 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック URL
http://qinggengcai.blog2.fc2.com/tb.php/1020-da5c6a50
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)